それって特別扱い?職場での「合理的配慮」をめぐる誤解と本音

定着支援・職場支援

それは“特別扱い”じゃないの?

「それって、特別扱いじゃないの?」
障がい者雇用を始めた企業で、よく聞かれる言葉です。


たとえば——

  • 「音に過敏なので、個室がいいです」

  • 「予定が急に変わると混乱します」

  • 「指示がたくさん出ると、何から手をつけていいかわかりません」

職場の中で障がいへの理解が十分でない場合、
そんな“配慮の要望”に対して、
「そこまで会社が合わせなきゃいけないの?」
と戸惑う声が上がることがあります。

正直、その気持ちわかります。
「みんな同じ条件で働いてるんだから」
「苦手なことは、少しずつ慣れていくべきじゃないの?」
そう思うのは、ある意味、自然なことかもしれません。


“配慮”とは何か?

では、“配慮”って何なのでしょう?

たとえば、
子どもが熱を出した社員が「早退します」と言える環境。
これを「特別扱いだ」と非難する人は、あまりいません。

あるいは——

  • 花粉症の人がマスクをつけたり

  • 腰痛持ちの人が椅子を替えたり

  • 視力の弱い人が眼鏡をかけたり

これらを「わがまま」や「甘え」とは言いませんよね。
むしろ 「必要な工夫」 だと受け止められています。

ところが、障がいのある人になると、
途端にハードルが上がることがあります。
「どこまでが普通で、どこからが配慮?」という線引きが、
急に厳しくなってしまうのです。


合理的配慮は「わがまま」ではない

本来、“配慮”はわがままではありません。

本人の希望と、組織の事情をすり合わせながら
「できること・できないこと」を整理し、
落としどころを探っていく。
それが合理的配慮です。


職場での具体的なケース

ケース1:音への過敏と個室の要望

ある職場でのケースです。
「音が気になって集中できません。個室で仕事がしたい」
という要望がありました。

たしかに聴覚過敏のある方にとって、
オフィスのざわつきは大きな負担です。

しかし、職場はフリーアドレス。常時使える個室はなく、
上司も「特別対応していたらキリがない」と悩んでいました。

話し合いを重ねた結果、
本人から「イヤーマフを使う」という代替案が出され、
それを会社も了承。

「できること」をすり合わせた結果、
互いに無理のない配慮が実現しました。


ケース2:指示の多さと混乱

また別のケースでは、こういった要望がありました。
「一度にたくさんの指示を出されると混乱してしまう」

職場は忙しく、
上司は「これとこれと、今日中によろしく」と一気に指示を出すのが常でした。

でもそれがかえって本人の混乱を招き、
業務の滞りにつながっていたのです。

そこで——

  • タスクを一つずつ伝える

  • 指示を出す人を固定する

という対応を取るようにしました。

結果的に、
本人のパフォーマンスが安定し、上司や同僚のストレスも減りました。


ケース3:予定変更への不安

さらに別の職場では、こんな声がありました。
「予定変更があると不安になって手が止まってしまいます」

すべての変更を避けることはできません。
でも——

  • 変更の可能性がある予定は、事前に伝える

  • 当日の変更は、理由を丁寧に説明する

そんな工夫で、本人も落ち着いて対応できるようになりました。


配慮は「手段」であり「優遇」ではない

配慮は、「なんでも言った通りにしてあげる」ことではありません。

本人が「こういう特性があります」、
そのため「こういう配慮があると助かります」と、
自分のことを理解し、相手に伝えること。

そして企業は、
その特性によって業務に支障が出るなら、
それを補う工夫をすることで、本人の力を発揮しやすくする。

それは、本人のためだけでなく、会社のための手段でもあります。


ところが——
時として、配慮が「目的」になってしまうことがあります。

たとえば、

  • 障がい者雇用の数字を満たすために、とにかく雇うことだけが先行し、
    「できること・できないこと」の整理もないまま、
    “とにかく優遇しよう”となってしまう。

  • 「かわいそうだから」「厳しくできないから」と、
    業務上の課題にも踏み込まないまま、トラブルが放置される。

それでは、組織の中で“戦力”として活かすどころか、
かえって孤立を生んだり、周囲の不満を高めたりすることもあります。


合理的配慮がもたらすプラスの効果

一方で、うまくフィットした配慮は、企業にとっても大きなプラスになります。

  • 業務がスムーズになる

  • 職場のコミュニケーションが改善される

  • 「どう伝えたら伝わるか」「どう工夫したら伝わるか」という視点が根づく

その結果、
他の社員の働きやすさや生産性にもつながっていくことが少なくありません。

このように合理的配慮は、
決して“特別な人のためだけの仕組み”ではないのです。

むしろ、私が支援の現場で強く感じているのは——
配慮があるからこそ、働ける人がいるという事実。

そしてその工夫は、障がいのある人だけでなく、
**誰かにとっての「働きやすさ」**につながっていくことも多いのです。


Park Styleが大切にしていること

「それって特別扱いじゃない?」と思ったとき、
その背景に、ほんの少しだけ思いをめぐらせてみてください。

配慮は、誰かだけの“特別”ではなく、
誰もが力を発揮できる場をつくるための、ひとつの方法かもしれません。


もし貴社で、合理的配慮の進め方や、
社員一人ひとりがイキイキと働ける職場づくりでお悩みでしたら、
ぜひPark Styleにご相談ください。