「職場の雰囲気が重い」「本音が言えない」そんなモヤモヤを感じていませんか?
実は、障がい者雇用を進めることで、組織全体の心理的安全性が向上し、全社員のパフォーマンスが向上するという驚きの研究結果があります。単なる義務履行を超えた、障がい者雇用の真の価値と、今日から実践できる具体的なコミュニケーション術をご紹介します。
📌 こんな方におすすめの記事です
- ✓ 障がい者雇用の定着率を上げたい人事担当者
- ✓ 合理的配慮の提供方法を知りたい管理職
- ✓ 障がい者雇用の業務切り出しで悩んでいる現場責任者
1. はじめに:職場の「モヤモヤ」、その正体は?
「なんとなく、職場の雰囲気が重い……」
「言いたいことが言えない、本音が出せない……」
「あの人の行動、どうしてだろう?でも、聞けない……」
きっと、あなたにも、そんな「モヤモヤ」を感じた経験はありませんか?
実際の企業での取り組み事例を見ると、このような「モヤモヤ」は健常者だけでなく、障がいのある社員からも同じように聞かれる声なのです。
この「モヤモヤ」の正体こそ、職場の「心理的安全性」の欠如です。これは、ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・エドモンドソン教授が提唱する「失敗やミスを恐れずに、安心して発言できる職場環境」を指します。Googleの研究でその重要性は広く認識されましたが、現場では「どう作れば良いか分からない」という声も聞かれます。
正直なところ、私自身も「障がい者雇用」という言葉に、かつては義務感や特別な枠組みを感じていました。しかし、現場で深く関わる中で、この言葉の真髄は、単なる義務の履行に留まらない、企業の成長と社員の働きがいに直結する本質的な価値であると確信しました。
でも、考えてみませんか? 心理的安全性は、なぜこれほど急に注目されるようになったのだろう、と……。あなたも、そんな疑問を感じたことはありませんか?
実は、これには明確な理由があります。働き方の多様化、リモートワークの普及、Z世代の価値観の変化など、従来の「上下関係重視」の組織運営では対応しきれない課題が増えているからです。
そして今回、私がお伝えしたいのは、障がい者雇用を進めることで、組織全体の心理的安全性が向上するという、一見意外な関係性についてです。単なる法定雇用率の達成という義務に留まらない、その奥深い価値について、今回は皆さんと共に考えていきたいと思います。
2. 心理的安全性を阻む「心のブレーキ」:4つの不安
職場の「モヤモヤ」の根源には、私たちの心に潜む「4つの不安」がブレーキをかけているのかもしれません。
- 「無知だと思われる不安」:質問して「知らない」と思われるのが怖い
- 「無能だと思われる不安」:ミスを認めて「できない」と思われるのが怖い
- 「邪魔をしていると思われる不安」:発言して「迷惑」と思われるのが怖い
- 「ネガティブだと思われる不安」:意見して「批判的」と思われるのが怖い
これらの不安が職場に漂うと、私たちは本音を隠し、コミュニケーションは形骸化していきます。特に日本では、「波風を立てたくない」という優しさが、かえって本音の対話を阻み、真の心理的安全性を遠ざけている、なんて皮肉な状況もあるかもしれません。
実際、ある製造業の事例では、障がいのある社員だけでなく、健常者の社員からも「忙しそうで質問できない」という声が上がりました。これは、障がいゆえの課題ではなく、職場全体に「聞きにくい空気」が蔓延していた証拠です。
多くのリーダーが心理的安全性を認識する中、若手社員の2割未満しか「高い」と感じていない調査結果は、この「心のブレーキ」の根深さを示唆します。この数字の裏で、どれだけの若者が本音を言えず「モヤモヤ」を抱えているのか……そう想像すると、胸が締め付けられます。
3. 障がい者雇用が拓く「心理的安全性のシナジー」
「障がい者雇用って、正直、大変そうで……」
これは、多くの企業が最初に抱く本音でしょう。障がい者雇用って、正直、大変そうで……と、かつての私も思っていた一人です。
しかし、この一見困難に思える壁を乗り越えた先に、障がい者雇用が組織全体に驚くべき「シナジー効果」をもたらす可能性があることを、横浜市立大学の影山摩子弥教授の研究が示唆しています。
- 「私たち」という共通性:障がいのある方が加わることで、健常者側は「自分たちは健常者」という共通性を再認識します
- 「思いやり」の芽生え:障がいのある方と接する中で、「支え合おう」という倫理的な意識、つまり「合理的配慮」の心が自然と育まれます
- 「助け合い」の輪:健常者同士が協力し、障がいのある方を支えようとすることで、チーム内の絆が深まり、「足を引っ張り合うなんて、もったいない」という意識が高まります
- 「安心」の空気:こうして「互いに配慮し合う」集団が形成されると、自然と心理的安全性の高い状態が生まれます。誰もが安心して発言し、行動できる場所になるのです
- 「パフォーマンス」の向上:そして驚くべきは、この安心感が、障がいのある方の働きやすさを高めるだけでなく、健常者自身のパフォーマンスまで向上させるという事実です
このメカニズムが示すのは、障がい者雇用を通じて「互いに配慮し合う」集団が形成され、自然と心理的安全性の高い状態が生まれることです。誰もが安心して発言し、行動できる場所になるのです。
実際に、精密板金製造のStux社では、発達障がいのある社員の「変化を許容しない」特性が製品検査の精度向上に繋がりました。その社員をサポートする過程で、健常者社員同士のコミュニケーションも活発になり、全体的な業務効率が向上したのです。
障がい者雇用は、単なる義務やコストではありません。それは、組織のしなやかさと強さを育み、パフォーマンスを向上させる、未来への戦略的な投資となり得ます。
障がいのある方の存在が、私たち自身の「思いやり」と「協力」の心を刺激し、結果として組織全体の「安心」と「成長」へと繋がる――この連鎖は、計り知れない可能性を示しているのではないでしょうか。
4. 「モヤモヤ」を溶かす実践的コミュニケーション術
では、この「モヤモヤ」を解消し、心理的安全性を育むために、私たちは今日から何を始められるでしょうか。
4-1. リーダーが築く「安心の基盤」:マネジメントの役割
リーダーの皆さんの存在は、まさに職場の「安心の基盤」を築くようなものです。
「分からない」を率先して表明する
管理職こそ、「これ、私も分からないから、一緒に考えよう」と言える環境を作ることで、部下は「上司も完璧じゃないんだ」と安心できます。
具体的で明確な指示を心がける
曖昧な指示は、部下の「できないと思われる不安」を煽ります。「よろしく」ではなく、「○○について、△△の方法で、□□までに」と明確に伝えることで、安心して業務に取り組めます。
相手の話を最後まで聞く姿勢を示す
パソコンを見ながらではなく、目を見て、相づちを打ちながら聞く。そのシンプルな姿勢が、「話を聞いてもらえている」という安心感に繋がり、信頼感が生まれます。
「どう思う?」という問いかけ
一方的な指示ではなく、意見を求めることで、部下の主体性を引き出し、全員が参加できる空気を作ります。
4-2. 日常の「小さな積み重ね」:社員一人ひとりの実践
リーダーだけでなく、私たち一人ひとりの日々の関わりが、職場の空気を変える「小さな積み重ね」になります。
「ありがとう」を積極的に伝える
小さなことでも感謝を伝える習慣を作ること。これにより、「貢献が認められている」という安心感が生まれます。
質問しやすい環境を意識的に作る
「分からないことがあったら、いつでも聞いてください」と具体的に伝える。そして、実際に質問されたときは、決して面倒そうな顔をしないこと。
定期的な振り返りの時間を設ける
月に1回でも、「今月、困ったことはありましたか?」「改善できそうなことはありますか?」と聞く時間を作ることも効果的です。
4-3. 障がいのある方との「心通う」コミュニケーション:具体的なアプローチ
障がいのある方とのコミュニケーションでは、それぞれの特性を理解し、寄り添うことが何よりも大切です。
視覚的な情報提供を心がける
業務手順書には、文字だけでなく、図や写真を使うことをお勧めします。これは障がいの有無に関わらず、誰にとっても分かりやすい資料になります。
進捗を定期的に具体的に確認する
「何か困っていることはありませんか?」ではなく、「今週の○○の件、どこまで進んでいますか?」と具体的に聞くことが大切です。
強みの発見と活用に注力する
障がいのある方の「苦手」ではなく「得意」な点、集中できることを見つけ、その力を活かせる業務を任せることが重要です。そうした方々が持つユニークな視点こそが、組織に新たな価値と、時に想像を超える機会をもたらすのです。
5. 結論:「義務」を「機会」に変える発想転換
「障がい者雇用は大変だ」という声は、確かに耳にします。しかし、適切なサポートと発想の転換で、これは組織全体を大きく変えるチャンスです。
重要なのは、「誰かのために」ではなく、「みんなが働きやすい職場を創る」という視点。障がいのある社員への配慮から生まれた「分かりやすい指示」や「視覚的な資料」は、結果的に全社員の働きやすさに繋がります。
心理的安全性の高い職場は、挑戦を恐れず、互いに支え合い、新たなアイデアを生み出す。これこそが、これからの時代に求められる「持続的に成長する組織」の姿ではないでしょうか。
さあ、あなたの会社でも、今日から「モヤモヤ」を解消し、誰もがイキイキと輝けるインクルーシブな職場づくりを始めてみませんか? その一歩が、きっと職場の空気と未来を大きく変えるはずです。
障がい者雇用を通じた組織づくりについて、具体的な相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。一緒に、すべての社員が活躍できる職場を作っていきましょう。