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- ✓ 合理的配慮の提供方法を知りたい管理職
- ✓ 障がい者雇用の業務切り出しで悩んでいる現場責任者
「障害者雇用」という言葉、最近よく耳にするようになったと感じませんか?
特に「発達障害」への理解は、少しずつ社会に浸透し、「合理的配慮」という言葉も企業で身近になってきたように思います。この変化は、多様な人材の活躍を後押しする、大切な社会の動きだと感じています。
でも、その一方で、私たちは「精神障害」について、どれくらい知っているでしょうか?もしかしたら、発達障害に比べて、精神障害にはまだまだ根強い偏見がある、と感じる方も少なくないかもしれません。
「発達障害も精神障害だけど、それ以外の精神障害って、なんだか怖いイメージがある…」 「急に暴れたりしないか?」 「対応がややこしいんじゃないか…」
そんな漠然とした不安や戸惑いを抱く方もいらっしゃるかもしれません。そのお気持ち、とてもよくわかります。実は私自身も、幼い頃に植え付けられた「精神障害者は怖い」という偏見が、実際に現場で支援し、当事者の方々と深く関わるまでは、心のどこかに事実として残っていたように思うからです。
精神障害者雇用の現状と課題
今、精神障害のある方の雇用数は、過去最高を更新し続けています。これは、企業が多様な人材を受け入れようと努力している証です。しかし、厚生労働省の調査を見ると、精神障害者の1年後の職場定着率は、残念ながらわずか49.3%。約半数の方が1年足らずで職場を離れてしまうという、厳しい現実で、企業にとって本当に大きな課題かもしれません。
「雇用する」という入り口の扉は開いたものの、そこで安心して長く働き続けてもらうための支援には、まだ課題が残されています。
そこで「見えにくい」精神障害に焦点を当てて、人事労務担当者の皆さんや経営者の皆さんと一緒に、誰もが安心して働き続けられる職場をどう築いていけるのかを考えていきたいと思い、コラムを書いてみました。
精神障害とは何か?「怖い」「ややこしい」というイメージを超えて
「精神障害」と聞くと、「急に暴れたりしないか」「対応がややこしいんじゃないか」といった漠然とした不安や、怖いものだという誤解を抱く方もいるかもしれません。
しかし、精神障害は、風邪や怪我と同じように、誰にでも起こりうる身近な「病気」の一つとされています。その症状は人によってさまざまですが、多くの場合、適切な治療や服薬によって落ち着かせることができ、安定した生活を送ることが十分に可能です。
「ややこしい」と感じてしまうのは、その特性が「見えにくい」からかもしれません。身体的な障害のように、外から見てすぐにわかるものではないからこそ、どう接したらいいのか、どんな配慮が必要なのか、戸惑ってしまうこと、ありますよね。
**偏見の背景には、多くの場合、「知らない」という不安が隠れています。**だからこそ、この「見えない障害」について、私たち一人ひとりが深く理解を深めることが、とても大切です。
「精神障害」と「発達障害」、何が違うのか?
「発達障害も精神障害の一つだよね?」そう思われた方もいるかもしれません。確かに、どちらも精神的な困難を伴いますが、根本的な違いがあります。
- 発達障害:生まれつきの脳機能の特性で、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)などが代表的です。先天的な特性であるため、その人の「個性」として捉えられることも多いでしょう。
- 精神障害:ストレスや環境、身体的な要因などによって、後天的に発症する状態や疾患の総称です。
もちろん、発達障害の特性が、日常生活や社会生活での生きづらさや強いストレスとなり、結果としてうつ病や不安障害といった精神障害(いわゆる「二次障害」)を引き起こすこともあります。そのため、両者は密接に関連していますが、その「始まり」が異なることを理解しておくのは重要です。
代表的な精神障害の種類と症状
精神疾患は多岐にわたり、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-11)やアメリカ精神医学会による診断・統計マニュアル(DSM-5-TR)に基づいて分類されています。主な診断カテゴリーには、以下のようなものが挙げられます。
気分障害(躁うつ病、うつ病)
感情的な障害で、うつ病は抑うつ気分、興味の減退、不眠・過眠、疲労感、集中困難、無価値感、自殺念慮などが少なくとも2週間にわたって続く状態を指します。躁うつ病(双極性障害)は、気分が高揚する躁状態と落ち込むうつ状態が不定期に繰り返されるのが特徴です。
不安症(パニック症、社交不安症など)
強い不安や恐怖心によって生活に影響を及ぼす状態です。動悸や息切れなどの身体的症状を伴うこともあります。
強迫症
小さなことを強く気にする「強迫観念」と、それを打ち消す行為を繰り返す「強迫行為」が特徴で、日常生活に支障をきたします。
統合失調症
幻覚(実際にはないものが見える・感じる)、幻聴(批判や命令する声が聞こえる)、妄想(監視されていると感じるなど)、思考がまとまらないといった症状が現れ、心や考えがまとまりづらくなる障害です。急性期、消耗期、回復期という段階を経て改善に向かいます。
パーソナリティ障害
物事の捉え方や感じ方、行動パターンが周囲と異なり、苦痛を感じたり日常生活に支障をきたしたりする状態です。
依存症
アルコール、薬物、ギャンブルなど、特定の対象に依存し、それがないと心身が苦しくなる状態を指します。意志の弱さではなく、脳機能のコントロールが難しいことに起因します。
高次脳機能障害
交通事故の外傷や脳梗塞などが原因で、記憶障害、注意障害、遂行機能障害など、認知面や行動に障害が出る状態です。
てんかん
脳の一部または全体の過剰な電気運動により発作が起こる病気です。多くは内服治療で通常の生活を送ることが可能です。
これらの精神障害の症状は多岐にわたり、個人差が非常に大きいため、画一的な対応ではなく、個々の特性と症状に応じた理解と配慮が不可欠です。
精神障害の原因とは?「意志の弱さ」ではない、複雑な背景
精神障害の明確な原因は、いまだ完全に解明されていません。しかし、一つだけ確かなのは、個人の「性格」や「意志の弱さ」によるものではない、ということです。多くの研究から、複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
- 遺伝的要因:生まれつきの「かかりやすさ」がある場合も示唆されています。
- 身体的要因:脳内の神経伝達物質のバランスの乱れや、ホルモン異常、あるいは他の身体の病気が影響することもあります。
- 心理的要因:過去のトラウマや人間関係の悩み、否定的な思考パターンなどが関与することもあります。
- 社会的要因:そして、企業が特に目を向けるべきなのが、この社会的要因です。職場での長時間労働、ハラスメント、業務内容のミスマッチ、人間関係のストレスなどは、精神障害の発症や悪化に直接的に影響を与えることがあります。
これらの原因を知ることは、「精神障害は誰にでも起こりうる、複雑な疾患である」という認識を深める上で、非常に重要です。特に、職場環境が原因となる社会的要因は、企業が直接的に改善できる部分であり、精神障害の予防と再発防止において、企業が果たすべき役割は大きいと言えます。
精神障害者が仕事で直面する具体的な課題
精神障害を持つ方々が職場で直面する具体的な課題について、以下に詳しく見ていきましょう。
体調の波と勤怠・成果の不安定さ
疲れやすさや精神状態の変動により、遅刻、早退、欠勤が増えたり、仕事の進み具合が安定しにくくなったりします。
これは、個人の問題として片付けられがちですが、その業務を周囲の従業員が肩代わりすることになり、負担感が増大し、チーム全体の士気低下に繋がるリスクもはらんでいます。
コミュニケーションや人間関係の困難
人に話しかけることや、質問・確認をすることに極度の緊張やストレスを感じたり、相手の意図や気持ちを汲み取ることが難しかったりする場合があります。
思考がまとまりづらく、周囲の会話や雰囲気にうまく合わせられない、という特性が見られることも。これが原因で、職場で孤立してしまったり、症状が悪化したりすることもあります。
指示理解や集中力の課題
情報処理能力に偏りがあるため、口頭での指示がうまく理解できなかったり、周囲の雑音が気になったり、短期記憶に困難があったりすることも。
集中力を維持するのが難しい、という方もいらっしゃいます。外見からは分かりにくいからこそ、本人が頑張っていても「なぜできないのか」「やる気がないのではないか」と誤解され、不当な評価や人間関係の悪化、そして本人の自己肯定感を深く傷つけることに繋がってしまうことがあります。
キャリア形成・キャリアアップの難しさ
精神障害を持つ方の約85%が非正規雇用で、正社員になれても約98%が役職を持たない一般社員だというデータがあります。
この数字の裏側には、どれほどの悔しさや、諦めきれない想いが隠されているのだろう、と想像すると、心が締め付けられます。
体調の波や短時間勤務の希望、コミュニケーション能力への懸念から、「キャリアアップは難しい」という固定観念が、まだ社会に残っているのかもしれません。これは、個人の能力不足ではなく、企業側の課題として捉えるべきです。
周囲に辛さを表現することの難しさ
精神障害は目に見えないからこそ、当事者が自身の症状や苦しさを周囲に具体的に表現することが難しい、という特性があります。
自分の特性や必要な配慮を説明することに大きなプレッシャーを感じ、そのストレスが症状をさらに悪化させてしまうことも。
心の中でストレスや不安が高まっていても、周囲の人がそれに気づかないケースがほとんどで、顔色が悪くなったり、手足が震えたりといった身体的なサインが出て、ようやく周囲が気づく、なんてことも少なくありません。この「見えない苦労」は、問題の早期発見・早期対応を阻害し、深刻化するリスクを高めてしまうのです。
これらの課題は、単に個人の「弱さ」として片付けられるものではありません。企業が「見えない障害」の特性を深く理解し、温かく寄り添うような支援を提供できなければ、従業員は無理を重ねて症状を悪化させるか、あるいは「もう、ここでは頑張れない」と、職場を去るという苦しい選択をせざるを得なくなってしまうのです。
企業が気づくべき、大切なサイン
では、私たち企業は、従業員のどんな変化に気づけば良いのでしょうか?
- 勤怠の変化:無断欠勤や遅刻・早退の増加
- 業務の変化:作業のミスや効率の低下が目立つ、同じ指示を何度も確認する、指示と異なる行動を取る
- 外見・行動の変化:身だしなみを気にしなくなる、表情が暗くなる、雑談に参加する頻度が減る、休憩を適切に取らない、不安からパニックになる
- コミュニケーションの変化:報告・連絡・相談が滞る、孤立しているように見える、質問が少ない
これらのサインは、従業員が**「助けを求めている」メッセージ**かもしれません。早期に気づき、適切な対応をすることが、何よりも大切です。
薬を飲みながら仕事はできるのか?──「治療しながら働く」という現実を、もっと知ってほしい
「精神科の薬を飲んでるって聞くと、大丈夫なのかな…?」そんな不安を感じる方もいるかもしれません。しかし、精神障害の治療において、薬物療法は非常に重要な役割を担います。多くの方が、症状を安定させ、日常生活や仕事の質を向上させるために、薬を服用しながら生活しているのです。
では、薬を飲みながら仕事はできるのでしょうか?
答えは、「はい、十分に可能です。そして、それが当たり前の社会であるべきです」。
実際に、多くの精神障害を持つ方が、薬を服用しながらも、真摯に仕事と向き合い、第一線で活躍しています。
もちろん、薬には副作用が伴う場合があるという現実も理解しておきたい点です。例えば、眠気、だるさ、口の渇き、手の震えなど。これらは集中力や判断力に影響を与え、細かい作業や頻繁な休憩を必要とすることもあります。
大切なのは、これらの副作用を「個人の問題」として片付けず、企業側がその影響を理解し、適切な配慮を行うことです。服薬時間や通院時間の確保、副作用による体調変化への柔軟な対応など、薬を飲みながら安心して働き続けられる環境を整えることが、何よりも重要になります。
クローズ就労の現実:メリットとリスク
精神障害を持つ従業員の中には、自身の障害を職場に開示せずに働く「クローズ就労」を選択する方が少なくありません。一般雇用と同等の給与水準やキャリアアップの機会を求めての選択であり、その背景には「障害をオープンにすることで偏見を持たれたくない」という、切実な思いがあることでしょう。
背景にある切実な思い
- 一般雇用と同等の給与水準やキャリアアップの機会を求めるため
- 障害をオープンにすることで偏見を持たれたくないという、切実な思いがあるため
現状
実際、障害者職業総合センターの調査によると、一般求人で就職した精神障害者の約6割が障害を非開示(クローズ就労)で働いています。
これは、発達障害に比べて精神障害への偏見が根強く残っている現状を如実に物語っています。
クローズ就労のメリット
- 一般枠での採用なので給与水準や昇進・昇格の機会が確保されやすいこと
- 「障害者」というレッテルを貼られず、周囲からの偏見に晒されることなく働けるという安心感
しかし、そこには大きなリスクと、本人にのしかかる重い負担があります
障害を非開示にしているため、業務内容や配属先、休憩、残業時間など、本来必要な配慮を基本的に受けることができません。
通院や服薬の時間を確保すること、副作用による体調不良を説明すること、そして症状が悪化した際に適切な休養や業務調整を求めること――これら全てを、一人で抱え込み、無理を重ねてしまうケースが非常に多いのです。
結果として、クローズ就労はオープン就労に比べて職場定着率が低いというデータも出ています。
約7割のクローズ就労者が、職場での服薬に関して困難を抱えているという調査結果は、その苦しさを物語っています。
この現実は、企業に対し、障害の有無ではなく、個々の従業員が今どんなニーズを抱えているのか、その人自身を見つめる視点を持つことの重要性を強く示しています。
障害を開示されたら:合理的配慮と職場文化の構築
もし、職場で働く大切な従業員が自身の精神障害を開示したいと希望した場合、彼らが安心して働き続けられる職場をどのように築いていけるでしょうか。
その鍵となるのは、個々の特性に合わせた「合理的配慮」と、それを支える「共に働く」文化を組織全体で築き上げていくことです。これは単なる特別な対応ではなく、**障害の有無にかかわらず、全ての従業員がそれぞれの能力を最大限に発揮し、安心して働き続けられる環境を整えるための、普遍的かつ不可欠な「心のバリアフリー」**と言えるでしょう。
勤務時間・業務量の調整
体調の波に合わせた柔軟な対応が重要です。
- 時差出勤、短時間勤務、フレックスタイム制の活用
- 業務量の調整
- 季節に応じた勤務時間の短縮
SMBCグリーンサービスや金融業S社の事例のように、短時間勤務制度や相談体制の構築が安定した就労を支援します。
職場環境の整備
精神的な負担を減らし、集中しやすい環境を整えることが大切です。
- 静かな休憩場所の提供
- ノイズキャンセリングヘッドホンや耳栓の着用許可
- つい立てなどによる集中しやすい環境作り
- 隣席との距離確保
- 壁に向かった席の設置
コミュニケーション支援
業務指示の明確化と相談しやすい環境作りがストレス軽減に繋がります。
- 業務の優先順位や目標を明確にし、指示を一つずつ出すこと
- 分かりやすいマニュアル作成
- 曖昧な情報や複数情報を一度に伝えない工夫
- 毎朝の定例会議での質問奨励
- 業務指導・相談担当者の明確化
SWSスマイル株式会社のように、業務終了後の振り返り時間を設け、困りごとを解決できる環境整備も重要です。
体調管理と復職支援
長期就労には体調安定とスムーズな復職支援が不可欠です。
- 体調不良時の休憩スペース確保
- 「健康ノート」での体調変化把握
- 状況に応じた業務変更(再発予防に繋がります)
- 段階的な復職支援プログラム(模擬出勤、通勤訓練、試し出勤など)
- リワークプログラムの活用支援
味の素株式会社や日立ソリューションズ東日本が独自の復職プログラムで再発率を削減している事例があります。
情報共有・啓発
職場全体の理解と協力が合理的配慮の機能に不可欠です。上司だけでなく同僚の「平等な対応」と「障害への理解・配慮」を両立したコミュニケーションが、精神障害者の「はたらくWell-being」を高めます。
- 社内研修や勉強会を通じた障害特性の基本知識共有
- 配慮事項、体調不良時の対応、コミュニケーションのヒントの共有
- 相互理解を深める機会の定期開催
「ナビゲーションブック」の活用
自身の状態を周囲に伝える有効なツールです。
- 特性、強み、職業上の課題の整理
- 体調を崩すきっかけやサイン、対処方法の記録
- 必要な配慮事項、生活面を含めた支援体制の明文化
- 自己理解を深め、上司変更や部署異動時のスムーズな情報共有
- 認識の齟齬やトラブル防止に役立つ
外部機関との連携:企業が一人で抱え込まない支援体制へ
企業だけで全てを解決しようとする必要はありません。多くの外部支援機関との連携によって、より専門的で継続的な支援が可能になります。
障害者就業・生活支援センター(しゅうぽつ・なかぽつ)
障害を持つ人々の自立した雇用を支援するため、就業面だけでなく、生活習慣、健康管理、金銭管理といった生活面も一体的にサポートしてくれる、地域に根ざした心強い支援機関です。
地域障害者職業センター
各都道府県に設置されており、障害を持つ人々に対する専門的な職業リハビリテーションや障害者雇用支援を提供してくれます。企業に対しては、雇用管理に関する専門的な助言や、職場適応を支援するジョブコーチの派遣なども行ってくれます。
ハローワーク(公共職業安定所)の障害者専門窓口
専門知識を持つスタッフが担当制で、以下のようなサポートを提供してくれる、身近な存在です。
- 障害者求人の紹介
- 履歴書作成支援、模擬面接
- 採用面接への同行
- 企業側への配慮内容の説明
- 就職後の支援
ジョブコーチ支援
厚生労働省が推進する支援事業の一つで、障害のある人が円滑に職場に適応し、長く働き続けられるようサポートする専門家です。職場での具体的な困りごとに対し、本人、上司、同僚、家族、医療機関、支援機関の間に入って調整を行ってくれる、実践的な「現場支援」のプロフェッショナルです。
精神障害者保健福祉手帳と障害年金
これらは、精神障害を持つ人々が社会生活を送る上での経済的・社会的な基盤を支え、就労を継続するための重要なセーフティネットです。企業は、手帳の取得や年金の申請について従業員に情報提供し、必要に応じて支援機関への橋渡しを行うことで、従業員が安心して治療と就労を両立できる環境を間接的に支援できます。
これらの機関は、就職前の準備段階から、雇用後の定着、さらには生活面の課題まで、多角的な専門的サポートを提供してくれます。企業がこれらの機関と連携することで、採用のミスマッチを防ぎ、従業員の体調変化への迅速な対応、職場でのトラブル解決、そして長期的なキャリア形成支援が可能となります。
そして、同じ経験を持つ仲間同士が支え合う「ピアサポート」の活用も、精神障害を持つ従業員の心理的安全性や自己肯定感を高める上で非常に有効ですし、共通の経験を持つ仲間だからこそ得られる「安心感」と「共感」は、制度的支援の「隙間」を埋め、より包括的なサポート体制を構築する上で大きな力となります。
シミックグループやパナソニックグループがピアカウンセリングやダイバーシティ・ネットワーキングを通じて孤立しない仕組みづくりに注力している事例は、その温かい効果を物語っています。
まとめ:未来への投資としての精神障害者雇用──「共に働く」社会を目指して
精神障害者の雇用は、単なる法的な義務の履行を超え、組織の多様性と包摂性を高め、全ての従業員が能力を発揮できる職場づくりに繋がる、とても大切な取り組みです。
適切な支援により精神障害者の職場定着が実現されれば、労働力不足の解消、生産性の向上、社会保障費の削減、そして企業の競争力強化といった、企業にとっても嬉しい経済的効果も期待できるのです。
「見えない障害」ゆえの困難があるからこそ、企業はより深く相手に関心を持ち、その背景にある感情や状況を洞察し、具体的な行動へと繋げていく必要があります。それは、上から押し付けるような支援ではなく、問いかけを通じて思考の余白をつくり、読む人が自ら内省し、新しい気づきに至れるような、共感的な姿勢が求められます。
精神障害者の職場支援は、「見えない障害」への理解促進と、一人ひとりの特性に応じた支援の実現が鍵となります。発達障害者支援で培われたノウハウを活用しながら、精神障害者特有の課題に対応した支援体制を構築していくこと。
これは、企業にとって未来への、そして社会全体にとって大切な投資であり、誰もが「自分らしく」輝ける共生社会実現に向けた、企業と社会の役割そのものなのです。
障がい者雇用を通じた組織づくりについて、具体的な相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。一緒に、すべての社員が活躍できる職場を作っていきましょう。